解説付 臨床工学技士国家試験 第36回 午後:第85問

値が上昇すると血液の粘性率が低下するのはどれか。2つ選べ。

a: 温度

b: 電解質濃度

c: タンパク質濃度

d: ヘマトクリット値

e: 血流のせん断速度

血液 は約45%の細胞成分と約55%の液体成分から構成される。血液が非ニュートン性の流体であることは、流れの中で細胞成分のほとんどを占める赤血球と液体成分である血漿との相互作用が生み出す粘度の変化にあるとされている。
血液の粘性を決定する最も主要な要因はヘマトクリット、赤血球変形能、赤血球凝集能、そして血漿の粘度である。血漿の粘度はその含水率と血漿中に含まれる高分子要素により決定される。即ち、血漿タンパク質の濃度とそのタンパク質の種類に影響されることになる。しかし、実際血液の粘性に最も強い影響を与えるのはヘマトクリットである。例えばヘマトクリットが1上昇しただけで、粘度は4%上昇する。この関係はヘマトクリットの上昇に伴い更に鋭敏になり、多血症の場合のようにヘマトクリットが60%から70%程度まで上昇すると、血液の粘度は水の10倍程になり、血管内を流れる血流は抵抗の上昇のために著明に遅延することになる。その結果として、組織への酸素運搬効率の低下に繋がる。血液の粘性に影響を与えるその他の要因は温度がある。温度が下降すると粘度は増加するため、低体温症の際には循環障害を起こすことがある。

a:正解。温度が上昇することで、血液を構成する分子の運動が活発になり、分子間の結合力は小さくなる。よって、血液の粘性率は低下する。反対に温度が下降すると粘度は増加するため、低体温症の際には循環障害を起こすことがある。

b:電解質濃度が上昇することで、浸透圧の上昇も起こる。赤血球内の水分が血球の外に出されることになり、赤血球は硬くなり、赤血球変形能が低下する。よって、血液の粘性率は上昇する。

c:タンパク質濃度が上昇することで、流動抵抗は上昇する。よって、血液の粘性率は上昇する。

d:ヘマトクリット値が上昇することで、血液中に占める血球成分の体積割合が増すことになる。血球成分が増加することで、流動抵抗は上昇する。よって、血液の粘性率は上昇する。

e:正解。血流のせん断速度が上昇することで、血管中心部と血管壁部とで血流速度の差が大きくなる。このとき、血管中心部に赤血球が集まる現象、集軸効果がみられるようになる。血管壁部には血漿の層ができ、見かけ上の粘性は低下する。

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臨床工学技士 国家試験 過去問
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